あ ら す じ

へそ曲がり夫婦の妻が介護に燃えあがりました
そこで目にした現とジレンマ

果たして自らが受けたい介護とは?

へそ曲がり亭主と暮らす妻は
やはりへそ曲がりでした

亭主の持ち帰ったパンフレットに
妻の悩みの解決策が……
やってみたら 大成功!
自信が挑戦させたのは資格取り

飛び込んだ介護現場の現実は
なぜ? なぜ? の連続でした
ふりかかる矛盾がジレンマを・・・

受けたい介護とは違う現実に
疑問とジレンマは深まるばかり

へそ曲がり視点なればこその
「自らが受けたい介護とは?」
偏って見える彼女視点の提案とは?

そこにはがありました
いま見失っている視点とは?

 「自ら受けたい介護を考えてみよう」
「介護は親世代の他人事ではない」
「介護はすぐそこに迫る自らの現実なのだ」

皆さんもご一緒に
いまそこにある介護を
見つめ直してみませんか?

 



 

第三版

小説の一部をご紹介しています

 今日は同行なの。
 同行と言うのは、利用者さんへ、サービスを提供する場合にね、単独のヘルパーさんだけでやってると、その人に不都合があった時、サービスを提供出来なくなってしまうのを避けたり、新人さんに、現場に即した対処を教え込んだりする場合などに、私と、その人で組んで、一人の利用者さんを看るのよ。
これって、理にはかなってるんだけど、いろいろ起こるわけ。
どこも、女の世界は厳しいのよ。
今日は、ポワンちゃんのお話しからするね。
この人、美也子さんていう名前があるんだけど、仲間内ではポワンちゃんて呼んでるの。
なぜにポワンかと言うと、天然なのよ。
まあ、私も、そういうとこがあるんだけど、この人、全部が天然なの。
 本日の利用者さんは八九歳のお婆ちゃん。
 でも、この人、矍鑠としてるのよ。
 いわゆる認知症はあるんだけど、まあ、普通に接してる限りは、分からないわね。
むしろ人格というのか、その人がこれまで生きてきた深みっていうんかな?
お話しをしてると、この方から教わることも多いのよ。
 こういう時って、私は、義母と格闘してた頃の事を、よく思い出すんだけどね。
それでね、今日は私がポワンを支えてあげる役なもんだから、作業の主体はポワンがやるのね。
このポワンって、自分自身がどマヌケのくせに、利用者さんに対しては厳しいのよ。
今日も、利用者さんをお風呂に入れる準備で、まずは、着てるものを脱がせる事から始めたんだけどね、アッ、本日の利用者さんのお名前は史(フミ)さんね。
「フミさん、もっと、もっと腕を上げてくれなきゃあ、袖から出ないでしょ~ ねえ」って、施設じゅうに聞こえるくらいの大きな声で怒鳴るわけよ。
 すると、フミさんもね「美也子、こら、何度言ったら分かるんだい。私ゃ、耳は遠くないんだよ……」って、これがまた大きな声で怒鳴り返すわけ。
 すると、ポワンたらね「自覚が無いだけだよフミさん」って、またヤルわけ。
「馬鹿、何度言ったらわかるのよ、この子は小さい時から手を灼かせてきたけど、そん歳になっても、ちっとも治らないんだね、お前は……」って、フミさんも返すわけ。
 分かるでしょう。
 フミさんは、ポワンの本名を知ってるから、その名前で呼ぶけど、自分の娘と、ゴッチャになってるわけよ。
だから、こっちも大声をあげるし、キツいわけよ。
それで、私がポワンに「もう少し優しいトーンで、ゆっくりと話しかけてあげなさい」って言うと、こいつときたら右から左で、聞いて無いわけ。
さっさか次の手順を進めちゃって「ほら、片足しっかり上げなきゃあズボン脱げないよ、フミさん」ってな兆子で、相変わらずのデカイ声でやってるわけ。
 だから私が「こらポワン、私の言ってること聴いてる? ねえ、ちょっと……」って言っても、相変わらずシカトなわけ。
だから私が、フミさんを支えながら、足をそっと持ち上げるようにしてやろうとした途端よ、このポワンのヤツったら「今日はフジちゃんは見てる役だから、手を出さなくていいよ。私一人で出来るもん」って、私にも、やっぱり施設じゅうに聞こえるくらいの大きな声で言うわけよ。
だから私も「こらポワン、私ゃ、耳遠くないんだからね」って、思わず怒鳴るわね。
すると、フミさんが、私をキット睨んでね「あなたさんは、どちら様でしたかねえ?」って言うわけ。
横じゃあポワンの奴が、ニヤニヤしながら私の方を見上げてさ「フミさん、ボケだから、許せ」って、拝み手して言うのよ。
私ゃ、お前に向かって言ってんだよっててんで、思わず、ポワンのやつを睨みつけてしまったわさ。
そうしたら、フミさんが私に急に優しい表情になってさ「どちら様か存じませんが、娘の失礼をお許しくださいませ」って言って、ペコペコと私に頭下げるわけよ。
そこへ、支援さんの頼子さんがやって来て、支援さんというのは、施設専属職員のことね。
「ポワン、何度言ったら分かるんだよ、お前は。私が、外の物干場に居たって、お前の声が聞こえるじゃないの。もっと、利用者さんには優しく話せって、言ってるだろうが」って、もの凄い剣幕で言うわけ。
ところが、ところがよ、ポワンときたら、私ん時とまったく同じで、これもまったくのシカト。
さっさと次の手順に入ってさ、またまた、いま注意受けた支援の頼子さんが居る真ん前でだよ「フミさん、フミさんてば、もっと左の足上げて! ズボン抜けないよ、上げて」って、大声でやりやがるのよ。
だから、頼子さんも頭にきちゃって「こらポワン、お前な、フミさんは左が麻痺してて不自由なんだって、何度言ったらわかるんだお前って奴は、それに、さっき、私が言ったことは聞いてたのか、お前は」
頼子さんも、あまり毎度のこのポワンに、頭にきてるもんだからさ「なんで、私が利用者さんと、ポワンまで介護しなきゃなんないのよ、戦力にならないじゃないさ。ゴメンネ。こんなのを同行で付けさせてさ、私、今夜、此奴と夜勤なのよ。思いやられるでしょう?」って言うの。
そうしたら、ポワンのヤツったらさ「頼子さん、今晩よろしくお願いしま~す。頼子さんだと、私、楽勝で、もの凄く助かるんで~す」って、シャーシャーとして言うんだよ。
こいつの頭ん中って、いったいどうなってんだろうって思った瞬間にね、「お前、就職先と入所先を間違えてんじゃねえか」って、頼子さん、ポワンに捨て台詞を残して行っちゃったわよ。
そうしたら、コイツったらね「間違えるわけないじゃんねえ。頼子のやつ、ボケ、始まったんじゃないの?」だって。
私さ、腹立つというより何より、吹き出しちゃったわさ。
そうしたらフミさんがさ「お若いのに、あの方、お気の毒ねえ~」だって。
いろいろあるのよ、現場って。