あ ら す じ

鎌藤シリーズ第二作目!!

 

介護士とヘルパー美女コンビが
闇組織の介護会社乗っ取り事件に巻き込まれるお話

身近な介護が裏社会に支配されてたら
あなたの情報が影社会に牛耳られてたら
「揺り篭から墓場まで」

そんなビジネスモデルが
生まれてたとしたら?

ベルトコンベアーで流されるがごとき
ビジネスモデルに載せられてるとしたら?

今や裏社会は巧みに
表社会と入れ替わってるんです
フロント企業などと生易しいものではありません
彼らの主力ビジネスは
ヤクや脅し、暴力……ではありません
みなさんに身近な介護
介護こそが美味しいビジネスなんです

介護が裏社会の一大ビジネスだったとしたら?
そんな臭いがネットを飛び交ってます

このお話は仮定として片付けるには
恐いお話なんです
既に腰掛けてるかもしれません
嗅覚を磨いてください!
ヒョットするかもしれませんよ!



 

 

小説の一部をご紹介してます

 その日は、介護福祉士加藤瑛子の臨時出勤日にあたっていた。
 八月初旬の暑い土曜日だった。
 瑛子は、先週入社したばかりの男性ヘルパー吉木とペアーを組み、島の東海岸、名護市の東側(太平洋側)にある、二見集落(地図中赤点線枠)まで訪問介護入浴サービスに向かう指示書を、ケアマネから受け取っていた。
 先週、契約がまとまったばかりの、今回初めての利用者宅であった。
 指示書には、五十八歳男性、本年五月、脳梗塞で倒れ左半身不随。会話可能。家族構成欄には、男兄弟五名同居とだけあった。
 瑛子は、ケアマネから「同行する吉木とは、利用者の三男が高校の同級生である」と聞かされていた。
 瑛子は、吉木の同級生がいると聞いて、少しホットしていた。利用者側に知人がいると、なにかと手助けをしてもらえ、安心なことも多いことを、入社三年目に入った瑛子は経験から知っていた。

 瑛子は、久留米の介護福祉専門学校を五年前に卒業して、同級生だった一樹と結婚をしていた。
 それぞれが片親育ちであったこともあり、親戚との間がギクシャクしてたことから、結婚後一年目にして、この沖縄県名護市に移り住んできたのだった。
 瑛子はミス久留米の候補に上がったこともある美貌の持ち主で、身長165センチ、今ではたいして背が高いという風でもなかったが、街ですれ違えば男たちが振り返るその容姿は、夫一樹の自慢でもあった。
 瑛子本人も、自分の容姿には自信を持ってたし、これまで付き合ってきた男性も片手ほどあった。
瑛子は、父が早く倒れ、在宅介護生活で苦しむ母の姿を長く見ながら育った。それが介護士の資格を取得する動機でもあった。
 夫の一樹は、名護に来てすぐに大手老人介護施設に就職が決まったのだが、瑛子の就職先はなかなか決まらなかった。
 そんな矢先、瑛子はハローワークに来てたイケメン紳士に声をかけられ、名刺を受け取ったのが、現在の介護会社に勤めるきっかけだった。
 紳士は長野と名乗った。“フォーリン”という社名の入った名刺には、介護関係の肩書きと資格が並び、代表取締役と記されていた。
 自宅にもどってネットで名刺の社名を検索してみると、社長が長野という同名会社が一社見つかった。
 名刺に書かれた電話番号も間違いなく一致していた。設立後、まだ七年目。従業員数二十数名ほどの小さな訪問介護会社だった。
 一見して素人づくりと分かるそのHPには、理想ばかりが大きく書き連ねられ、リハビリ、デイサービス、訪問介護、介護セラピー、介護タクシーなど手広くやっているように書かれてはいたが、資本金はたった八十万円の合資会社とあった。
「合資会社なんて、いま時あるんだ……」という印象と「従業員が二十名以上もいながら、そんな資本金でやってけるんだ……」といった疑問だけが残った。
 というのも、久留米の専門学校で聞かされた「介護会社といってもピンキリだよ。経営体力の無いものや、中には暴力団が経営してるものまであるからね。十分調べてから面接に行きなさいよ!」そう聞かされてたからだ。
 その時、瑛子は「そうだ、美也子さんに聞いてみよう……」と思い立った。 
 就職先が決まらずブラブラしてた一時期に、市のボランテイアを半年ばかりやってた頃知り合ったのが、市の保健婦をしている美也子だった。
 早速、彼女に携帯を入れてみた。
「ねえ、美也子さん。フォーリンっていう会社を知ってますか?」
「ああ。フォーリンね。ほら、あなたと知り合った、例の寝たきり予防ボランテイアを、ウチが委託してる会社よ」
「あっ、あれがそうだったんですか……」
「だから、涼子ちゃんも、香枝ちゃんも、みんなあそこの人なのよ」
「そうだったんだ……」
 なんだか、知ってる名前が二人も出てきて、少し胸を撫でおろす瑛子であった。
 丁度、美也子との携帯を切ったところへ、玄関に夫の一樹が帰って来た気配を感じた。
「ただいま。暑かったなー。堪らないなこの暑さ。どうにかしてくれって言いたいよ……」
 着てるものを脱ぎ捨てながら、そのまま浴室へ向かおうとする一樹の背後から「フォーリンっていう会社に決めようと思ってるんだけど、日曜日に一緒に見に行ってくれるかな?」
 そう声をかけたが、彼は無視するように浴室へ行ってしまった。
 仕方なく瑛子はキッチンで夕食の仕度にとりかかった。

 炒め物をしている瑛子の背後に、一樹の気配を感じた瞬間、脇の下から二つの胸の膨らみに手が滑り込んできて、優しく揉む感触を、瑛子は炒める手を休めず楽しんでいた。
「さっき、なんだって?」
 一樹が耳に息を吹きかけながら囁いてきた。
「フォーリンっていう会社に決めようかなって思って、一緒に見に行ってくれるかな?」
 手が胸から下の方へ下がってくるのを感じながら、「それって、介護関係の会社?」
「うん。ちょっと、こら、やだって……ば」
 一樹の手が、スカートの裾を捲り上げにかかろうとするのを片方の手で抑えながら「テーブルの上に、ハローで貰ってきた名刺を置いてある。チョット、待って……ダメだって……ば。さっき、市の美也子さんにも聞いてみたんだけど、市の仕事もやってる会社らしいよ……」
「フーン……」
 そう言っただけで、一樹の手は強引にスカートの中へ入ってきた。
「お腹がすいてるんでしょ? うう……チョっと……」
 薄いパンテイーの上から、彼の指が大事な溝の上のボタンを探しあて、ゆっくりと優しく擦ったり、つまんだりしはじめていた。
「ショウガナイわね……」
「君だって、嫌(いや)じゃないだろう?」
 仕方なく瑛子はガスのダイヤルを止めて、彼の方に向き直った。
 即座に、彼の唇が重なってきた。そのまましばらく二人は抱擁をつづけ、寝室へ向かったのだった。

 3~40分ほど経ったであろうか。キッチンテーブルに戻った二人は、夕食をとりながら先程の話のつづきをはじめた。
「フォーリンって、どっかで聞いたような気がするな……」
「市の仕事もやってるらしいから。小さいけど、しっかりしてるんじゃないのかな?」
「うん。う~」
 一樹は、なにかを思い出そうとしてる表情であったが……。
「とにかく、一度見に行ってこいよ。近いんだろう?」
「うん。車で10分ぐらいかな……」
「そうか。歩いてっていうわけにはいかないんだよな?」
「社長さんのお話では、原則、自家用車でっていうことだったわ」
「まあ、訪問看護なんてやってるところは、どこもそうだよ。俺のところみたいに、社の介護用車を、通勤にまで使わせてくれるところなんて無いみたいだぜ」
「そうなんだ。でも燃料代は出るのかなあ?」
「使った分マルマル出るかどうかは分からないけどさ。多分、それなりにっていうところじゃないんかな……」
「じゃあ、明日にでも行って聞いてくるね。日曜日に一緒に行ってもらおうかなって思ってたのに……」
「俺、日曜日は職員のレクリエーション会があるんだよ」
「またあ……」
「しょうがないさ。母体が大きいと、とにかく行事が多くってさ。でも、収入が安定してるし、我慢しろや……」
「そうだね。まがいなりにも普通車を持てるんだもんね」

 翌日、瑛子は為又にあるその会社を訪ねてみた。
 四階建て社屋で、軽の介護車や自家用車、マイクロバスなどが雑然と建物前に駐車していた。
人の出入りも多く、丁度、時間が九時前であったこともあり、ヘルパーのトレードマーク、ジャージー姿の人たちが、会社マークの入ってない車の車体後部と左右に、マグネット式会社ロゴシートを貼りつけて、次々と出発して行くところだった。
 一階には受付らしきものは見当たらない。
 すれ違った人に尋ねると「社長なら三階の事務所にいるよ」と言われた。
 古ぼけたエレベータは、何やら荷物を運び出す人たちでごった返しており、とてもすぐには乗れそうになかった。
 仕方なく瑛子は脇階段を上って行くことにした。
 ムシムシして風の通らない階段室を三階まで上って行くと、瑛子の薄いブラウスの下を、背中や脇の下から吹き出す汗が流れるのが感じられ、気持ち悪いったらない。
 瑛子は、とりあえず深呼吸をしてから、額と頬をつたう汗をハンカチで拭き取ると、階段踊り場の左右を見まわしてみた。
 左の部屋はリハビリ室らしく、白衣を被った作業療法士らしき数人の男女が、利用者を受け入れる準備に大忙しといった風で立ち働いていた。 
 右の部屋が事務室らしく、半袖のカリユシウエアを被った男女が五人、机の上の書類やらパソコンに向かう姿が見えた。
 一番奥隅にある大きな事務机の向こうに、昨日ハローで会った、社長らしき人物の姿を見つけた。
 事務室のドアをノックして入り、近くにいた女性に社長への取りつぎをお願いした。
 事務員が、席から「社長!」と声をかけると、デスクのパソコンに向かっていた人物が顔をあげ「やあ!」といった感じで、瑛子を手招きするのが見えた。
 社長は事務机の脇にある応接セットを指し、そこに座るよう言った。
「履歴書は、お持ちですか?」
 瑛子は、用意してきた、昨晩にわか作りの履歴書を社長の方へ差し出した。
 社長は、瑛子の履歴書にザット目を通すと、瑛子を値踏みするように、上から下までゆっくり眺め、再び目を合わせるとニッコリ笑って「色々ありますが、どの職種を希望されますか?」と聞いてきた。
「資格は、そこにありますように介護福祉士と自動車普通免許しか持っておりませんので……」と答えると「市のボランテイアをやっておられたんですよね? それじゃあ、うちのスタッフも何人かご存知ですよね?」と聞いてきた。
「はい」
「お二方ほど知りあいになりました……」
「そちらは常に人手不足なんで、そっちを見てもらうかな。金城君! チョット」
 社長が、事務作業をしていた金城と呼ばれる年配の男性を呼び寄せた。
「この人、加藤瑛子さん。今日から入ってもらうから。君、給与とか手当、保険なんかの細かいところを教えてあげて。その後、島袋さんのところへ案内してやってくれるかな?」
 金城と呼ばれたその男性も、やはり瑛子の全身を何度も舐めるような目つきで観察した後、嫌らしい薄笑いを浮かべながら、低くカスレる声で「加藤瑛子さん。こちらへ」と自分の席へ案内して座った。
 もう一度、瑛子を上から下まで品定めするような目つきで眺めた後、しばらく彼は黙っていた。
 瑛子は、こうした扱いを受けることに慣れっこになっていたので「お給与の方を聞かせていただけますか?」と聞いてみた。
「あっ。給与ね? そう、そう。社長。この方は正社員ですか? パート採用ですか?」そう聞いたではないか。
 これには、瑛子もムカついて「昨日のお話では、正社員と伺いましたけど……」と聞き返していた。
すると社長が「うちでは、本採用まで二ヶ月間ほどはパート扱いで、すべての職種を経験して貰う事になってるんだよ」と答えたので、事務長がつづけた。
「そうすると……相場で、二ヶ月間は時給680円。残業には別途手当が付いて……。それから、自分の車を使った時には走行距離に応じた燃料代が出るからね」
「はあ……」
「君、車は軽? それとも普通車?」
「普通車です」
「豪勢だね。うちじゃあ、みんな軽なんだけどね……」嫌味ったらしい口調でそう言った。
「燃料代は軽に換算して出るから承知しといてね。これが換算表」瑛子は燃料の換算表を手渡された。
「再度、二ヶ月後に社長と面接してもらって、本採用に決まったら正社員ということで、月俸15万くらいだけど、保険だ、税金だって差し引かれるから、手取りでは12万を少し切ってしまうかもしれんがね……。だが、残業手当はパートと違って、周囲の相場より高いよ」と言った。
 瑛子は、月俸は月並みとしても手当が付く事に惹かれて、その場で、ここに勤めようと決めてしまった。
しかし、それがこの会社の常套句だと知るのは、ズット後のことだったが。