あ ら す じ

 

押し寄せてくる情報津波に蠢く危機

それを探知する会社のお話です

「類は友を呼ぶ」と申します
学者、役人、リサーチャー
まったく異なる社会で活躍してきた三人が
「観察」のKWで結ばれます
誕生したのがRP社

パソコン通信 インターネット 携帯電話
通信・放送融合社会にスマホの普及

情報洪水と言われてきた環境が
情報津波として襲いかかってきてます

玉石混交の情報津波

視点を重ね合わせて見えてきたモノとは?

情報に「踊らされず」
「踊り切る」には
「確かな視点」が必要です
視点の重なりに見えた輝きこそが・・・

そう考えた先達には勢いがありました
そこは女性の社会進出が進んだ
社会でもありました
そんな処へ
へそ曲がり男が飛び込んで来ます

情報マトリックスを駆使して
生み出した視点が
女性支配の職場に変革をもたらします


鎌藤シリーズ第一作目!!
「島で裏社会が暗躍する産廃処理のお話し」 
マスコミを賑わせる枯葉剤の行方も絡み
奇想天外な現実が明らかになります

周囲と異なる視点の魅力をお楽しみください!

あなたはへそ曲がりと呼ばれたことがありますか?
周りこそがへそ曲がりであると私は考えてます
チョコットずれた視点からは
見えなかったモノが見えて来るからなのです

「リソース・クライシス」とは
そんなサスペンスチックなお話です



 

第三版

小説の一部をご紹介しています

 

RM(リソース、マスター)の現場はいつも肉食系女子との戦いだった。
とりわけ鎌藤の天敵である佳子との戦いが主たる戦場ではあったのだが……。

さて、佳子との出会いは前に少し触れといたが十五年前に遡るのだ。鎌藤がRP社神奈川支社で仕事をしていた頃の事であった。
伊勢原にあった屠殺場の仕事で、吉田から紹介されたのが初対面だった。国立の女子大を主席で卒業した才媛との事だったのだが、第一印象は頗る(すこぶる)異なものだった。
その日は土砂降りの雨だった。
 当時は農協施設だった屠殺場の駐車場で、鎌藤は吉田のベンツに乗って彼女を待っていた。
降りしきる雨に煙る畑中の一本道を、颯爽と二台のハーレーダビッドソンが腹に来るエンジンの超低音を響かせなて近づいて来た。
その一台は鮮やかな真紅の塗装で、後に続くもう一台はメタリックブルーというド派手な井出達の二台の大型オートバイが駐車場のテント屋根の下へ滑り込んで来た。
ベンツを降りた吉田と鎌藤の前に現れたのは、赤いヘルメットを脱いだ、身長百八十センチの髪の長い美女だった。それが佳子だったのだ。
赤革の上下スーツに身を包んだ彼女の第一印象は、外国映画に出て来る美人女スパイそのものだった。
ところがこの美女、鎌藤への第一声は「な~んだ、上から百、百、百のドラエモンか……」だった。
確かに、肥満気味の鎌藤であったのだが、これを聞いた瞬間、彼女に対する印象は一変してしまった。
容姿と全く似ても似つかないガサツで、戦闘的なその女を、鎌藤はコヨーテと呼ぶことに決めた。
戦闘的で礼儀も常識も欠落した女が、誰が見ても美人という皮を被った性人種という印象からだった。
一緒にやって来たブルーの方は、森と吉田から紹介された。
此奴は、メットを取ると背丈は百六十センチぐらいしかない眼鏡をかけた、高倉健がニヤケたような男だった。此奴ときたら、やたらと人懐こく、いきなり初対面の鎌藤にハグしてきたから、彼は思わず突き手の要領で右手を差し出してみたら、意図も簡単に後ろの水溜りに仰向けにヒックリ返ったのだった。
「大丈夫かよ、コイツ!」それを見て、鎌藤は思わず口に出していた。
すると佳子が彼を見下しながら「軟いんだよコイツ!」そう言って、横を向いて舌打ちをしたのだ。
此の森が、後に太極拳の大先生になろうとは、人の人生とは本当に分からない。
ビショ濡れ姿で立ち上がった森は、そんな仕打ちを気にもかけずに笑いながら鎌藤に握手を求めてきたのだ。
「いや、いや、一昨日までイタリア旅行に行ってたもんで、失敬……」何だか分からん言い訳を言った。
鎌藤とこの森が、後々まで腐れ縁になろうとは、そして劇的な事件に巻き込まれようとは、その時は知る由もなかったが……。
傍らで鎌藤達を見守っていた吉田が、佳子に「此処へ君のスタッフで入ってもらう。森君、君の処からも三人ほど入れてもらう事になるから……。今日は鎌藤さんが、此処の人事課長と縁戚と言うことで、場内で不足する緊急人員の補充名目で案内を受けてくれるかな……」
それだけ言い残して、吉田はサッサとその場を去って行ったのだ。
 この時の鎌藤は、RP社の仕事を手伝い始めて一年経過していたのだ。
 しかし現場を直接覗くのは、この時が初めてだった。
佳子は馴れ馴れしく「ねえ、ドラちゃん」鎌藤の肩に手を掛けながら話しかけて来た。
あまりの馴れ馴れしさに、鎌藤は思わず「ドラちゃんって、俺は鎌藤だけど……」
「どっちでもいいんだけどさ、ドラちゃん」
背丈のデカイ佳子は百七十センチの鎌藤を見下すようにして、ニヤッとして見せながら繰り返したのだ。
彼女なかなか押しが強そうだった。
鎌藤はすっかり馬鹿にされた気分になり、彼女を無視して、森に向かうと「じゃあ行きますか?」そう声をかけると、森の方は「ハイ」と素直に応じ、雨の中を小走りに進む鎌藤の後に従いて来たのだった。
兎に角土砂降りだったので、鎌藤達は事務棟の玄関に駆け込み、後ろを振り返った。
すると佳子はさっきの場所に突っ立ったまま、こちらにやって来る気配を見せない。ムカっときた鎌藤は彼女を無視して、そのまま森と事務棟の中へ入ってしまったのだ。
既に、玄関脇の応接で鎌藤達を待っていた人事課長に森を引き会わせることにした。
「早速ですが、明日から男性三名女性四名の手配がつきましたので、これで何とかなりますでしょうか?」
そう言ったら「いやいや今回は急なお願いでスミマセンでした。米国産輸入牛の話もありまして、臨機応変の処理が求められているんですが、此処は機械化が遅れとりましてね。基本的に人海戦術なもんですから。いつもなら農閑期で農家から人を出してもらうんですが、此の間の台風で、農家もそれどころじゃなくなりましてね。弱っとったんですわ」
課長は頭を掻きながら話した。
「それで女性の方々は大丈夫ですよね?」
心配そうに鎌藤に聞いてきた。
「ええ、外に一人来てますが、チョット催しちまったようで、直ぐ参りますから彼女に再確認をさせます」
適当な事を言い繕って彼女を呼んで来るよう森の脇腹を突っいた。
暫くして森が一人で戻って来ると「彼女、トイレを探してるのかなあ? それとも、ただ長いだけなのか……」
そう首を傾げながら言うだけで一向に要領を得なかった。
その時だった。
外から「ギャー」と言うかなり甲高い不気味な女性の悲鳴が事務所の中に聞こえて来た。
タバコを吹かしていた課長は、ビクッと顔を上げ、目のあった鎌藤に向かって「屠場を覗いちまったかな?」鎌藤には分からない事を言い出したのだ。
課長は突然血相を変えて鎌藤達をその場に残して、事務所の裏口へ駆け出して行った。
そしたら、裏口のドアーが表から引き開けられて、上から下まで白カッパのようなビニール製と思われる服装の男が駆け込んで来て、課長の前に立ち塞がったのだ。
「課長! 外部の女が、屠場の整列柵扉を開けっ放しにしてブッ倒れちまいやがったんで、大変な事になっています!」そう叫んでいるではないか。
鎌藤達も直ぐに応接を飛び出して課長達の後を追った。
事務所の裏口を抜けると、そこは強烈な異臭世界だった。そこの空気は血を煮えたぎらせたような悪臭と、消毒薬の入り混じった、慣れない鎌藤達にとって強烈な吐き気を催す異臭だったのだ。
外廊下の先には屋根だけの体育館のような建物が先まで続いているのが見えてきた。そちらに向かって進むと、前方に三~四人の人だかりが見えてきた。
その先は開け放たれた柵扉の向こうの広場に向けて、一目散に逃げて行く牛の列が目に飛び込んできた。
あちこちから集まって来た人達がその牛達を遠巻きにして、他の方向へ誘導しようと、口々に叫ぶ声も聞こえて来た。
やっと最初の人溜まりに駆け寄った鎌藤達の目には、グチャグチャの床の上に、真赤の革スーツを纏った女が大の字に気を失って倒れている姿が飛び込んで来たのだ。それを見て、鎌藤は思わず「この馬鹿女が!」と言ってしまっていた。そしたら気を失っているとばかり思っていたその女、目をカッと見開いて、右手は鎌藤のズボンの裾を鷲掴みにして「馬鹿女だと? テメエ、ドラえもんが……」そう言うや、その場に立膝で起き上がろうとするのだが床が滑って、彼女、上手く立ち上がれないのだ。
そうこうしてる内に、床の泥濘(ぬかるみ)の正体が血泥だと分かるまでにそう時間はかからなかった。
異臭の正体見たりと気づいた鎌藤達は一気に気分が悪くなって、傍の柵を掴むとシャガミ込んでしまったのだ。
「イヤー参ったな。此処は外部の人が入って来る所じゃないもんで、どうしようか……」
そこに居合わせた職員連中がオタオタしながら三人を抱え起こすと、事務所の裏側にあるシャワー室へ担ぎ込んでくれたのだ。
取り敢えずは血泥で汚れた三人の服装部分を素早く職員達がシャワーで洗い流してくれたのだが、その流れ落ちる湯で薄く広がる血を見て、三人は生きた心地がしなかった。
それでも服に付いた血がもう湯では落ちないところまで行くと、少しは気持ちが落ち着いてきたのだった。
課長さんが「あそこは通称ギロチン街道と言って……」と現場の説明を始めたが、鎌藤達はそんな話に耳が向かず、兎に角佳子に向かって「お前、アホか! プライドばかりで使えねえじゃねえか……」そう怒鳴っていたのだ。
その時だけは少し殊勝な顔をしていた佳子だったが「チャンと明日から来るもん。他の娘も連れて来るから大丈夫だもん」拗(す)ねたような涙目で鎌藤に言ったのだ。
「昨期の無様じゃあ、四人でブッ倒れられたら此処じゃ仕事にならねえんだよ!」そう畳み掛けてやった。
 それでも佳子は「大丈夫だもん。大ジョブだって言ってんだろう! このクソドラが……」と、いきなり豹変して啖呵を切ったのだ。
そのやり取りを見てた課長が、笑いながら「あんた達に入ってもらう所は、あんな場所じゃあなくて、出荷センターだから……」
明日から入る場所の説明を始めたのだ。
話してた課長は、その時になって、佳子の美貌に気付いたのか「しかしこんな別嬪さんが入ってもらえるんかね?」とニヤケながら言ったのだ。
 美人は特だなあって思ったが、鎌藤は頭に来てたから「用が済んだら、ついでに屠殺しちまってください!」と、腹立ち紛れに言ってた。
「まあ、お顔に似合わず凄いね、この娘」
課長が付け足したから「似たり寄ったりの、凶暴なメスが明日から四人来ますので宜しくお願いします」
そう言って方法の体で鎌藤達はそこを辞したというわけだ